過去世から積み重ねた心の世界

自分ではどうすることも出来ないこの世で受ける善悪の運命。

「宿業」とか「宿命」とか呼ばれているもの。

それは、過去世から積み重ねた身・口・意の三つによる善悪の業、いわゆる心の癖がもたらすものと言われている。

因果律」と言う言葉がある。その意味は「すべての出来事は、ある原因から生じた結果のすがたで、その間には一定の必然的関係があり、原因がなくては何ごとも起こらない」ということだ。

この言葉は、主に物理学などの科学的法則を説明する際に基礎となるものだが、心の世界を説明する際にも非常に有効な考え方でもある。

例えば、説明が困難な現象である生まれた時点での出自による社会的、経済的、環境的、身体的、地理的、文化的…などの違いをどう説明するか?

また、宿業、宿命と呼ばれるものをどうやって乗り越える意思や力を得られるか?

それを偶然との言葉で片付けることも可能であるが、それではこの世で悩み苦しんでいる人々を救うことは出来ない。ましてやこの世界を平和にしようとなどとは…。

今まで、お釈迦様がお説きになられた一念三千の法門を修得した方は何人かいられるが、そのお一人の言葉は「過去の因を知りたいと思うなら、その現在の果を見なさい。未来の果を知りたいと思うなら、その現在の因を見なさい」と言うこと。

この「一念三千」の法門の理解・修得は困難である。しかし、この世の皆の幸せを願うなら、先ず、この「心」の世界が過去・現在・未来に繋がっていることを信じることだ。

心の世界の因果律はごまかしようのない峻厳のものだ。因果応報の心の世界…、一見、余計なお世話だと思うがこも知れないがそんなことはない。

人はこの因果律、因果応報の心の世界があるからこそ、悩み、気づき、揉まれて成長するのだ。

また、この因果律は、現在の心の「意識」(意思)によっては、現世での未来のみならず、過去世から積み重ねてきた「業識」や来世の運命までも変えることが出来る可能性を与えている。

「過去の因を知りたいと思うなら、その現在の果を見なさい。未来の果を知りたいと思うなら、その現在の因を見なさい」…。

よくよくこの言葉を考えると、過去も未来も今の状況に関わっていることに気づく。

現在の意思によって過去世から続く心の悪い癖を修正するよう努力すれば、過去も未来も変わっていくと言うことだ。これを「因果倶時」と言う。

その意味は、この現在の心(意思)に過去の因と未来の果がともに同時にそなわると言うことだ…。

(参考:「開目抄」日蓮

「過去の因を知しらんと欲せば其の現在の果を見よ未来の果を知らんと欲せば其の現在の因を見よ(過去の因を知りたいと思うなら、その現在の果かを見なさい。未来の果を知りたいと思うなら、その現在の因を見なさい)


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